番組制作に伴う複雑な経費精算の負担軽減と効率化、企業グループのガバナンス強化を目指して

~AI-OCR、BIツールを連携させた使いやすい会計システムの構築へ~

導入前の課題と効果

導入前の課題

  • 紙の伝票を前提とした会計システムであったため、経費精算をするには会社への出社が必須
  • 番組ごとに承認ルートが異なるなど放送局特有の複雑さに対応するのが困難
  • 番組ごとの損益分析ができておらず、予実管理の手間が煩雑

導入効果

  • 「Biz∫」による伝票の電子化によって、いつでもどこからでも経費精算と承認が可能に
  • AI-OCRを活用し、領収書をスマホで撮影するだけで自動的に入力される方式を導入、現場スタッフの負担を軽減
  • BIツールで、番組ごとの損益分析、予実管理が簡単に アクセス権も細かく設定

「Biz∫」導入経緯

加藤 克行 様
株式会社TBSテレビ
ICT局 システム開発部 部次長
加藤 克行 様

会計システムの更改に至る背景や課題を教えてください。

加藤様私たちは、TBSホールディングスを中核としたグループ企業として、ラジオやテレビの放送などの放送事業、インターネット配信やイベント、不動産など幅広く事業を展開しています。そのなかでDXや働き方改革にも取り組んできました。

当社の番組制作スタッフは、長期間にわたって社外での取材や撮影に取り組んでいる者も少なくありません。そして、ロケ先などで撮影に必要になった物品や弁当など、いろいろなものを購入しています。しかし更改前の旧会計システムは、イントラネット上でしか利用できなかったために、経費精算をするには必ず出社して処理を行う必要がありました。しかし、現場の働き方改革を進めるためには、作業する場所に依存せず、どこからでも経費精算が出来るような仕組みを整える必要がありました。

また、2020年に旧会計システムの各種保守期限を迎えることもあり、2017年頃から新たな会計システムの検討を本格的に始めました。

増田 一成 様
株式会社TBSホールディングス
株式会社TBSテレビ
財務戦略局 経理部 部次長 公認会計士
増田 一成 様

会計システム更改にあたって目指したもの、検討したことをお聞かせください。

増田様経理部としては、利用する現場の負担軽減を第一に考えました。まずは、いちいち会社に戻らなくても、ロケ先などからスマートフォンなどを利用して経費精算ができること、そしてなるべく簡単に入力できることです。

加藤様放送事業を支えるシステムは1秒のシステムダウンも許されないといったものが多いため、元々当社が管理するシステムは、セキュリティーと信頼性を両立できるオンプレミス型が主流でした。しかし、昨今の状況も踏まえ、開発や運用が効率的に進められるクラウド型の導入も含めて、幅広く検討を進めました。

「Biz∫」選定理由

「Biz∫」採用を決めた理由を教えてください。

加藤様

私の中で最も大きかったのは、国産のERPであるということでした。さらに、売上1兆円を超えるような大手企業や放送局への導入実績を多数持つということから、Biz∫については、提案を受けたときから信頼できると思っていました。

増田様

「放送局特有の複雑なニーズ」にも対応できそうなところに期待がありました。番組の制作現場からは、撮影に必要な小物や、現地で購入する弁当のような少額の領収書が大量に提出されます。領収書だけでも1日あたり2000件に達するほどでした。また、さらに経費承認ルートが複雑で、番組ごとに異なっていました。

加藤様

会計システムは導入後10年、場合によっては15年以上と長く活用する可能性があることを考えると、その間にグループ会社の再編や買収等による事業拡大、ユーザーの増加などにも柔軟に対応できるものにする必要がありました。特に、ライセンスにまつわるリスクは可能な限り回避したかったので、できればサーバーライセンスのソリューションにしたいと考えていました。

それらを検討したうえで「Biz∫」採用を決めたわけですね。

加藤様

2018年にRFPを作って、可能な限り多くのSIerに声を掛けました。その中で「RFPに記載されたご要望にすべてに対応できます」という提案をしてくださったのが、NTTデータ・ビズインテグラルと、そのパートナーであるJSOLでした。

会計システム

システム概要図

いただいた提案は、電子承認に用いるワークフロー「intra-mart」、intra-martを基盤として使う「Biz∫会計」「Biz∫販売」、「JSOL経費精算テンプレート」に、AI-OCR「領収書Robota」、BIツール「DaTaStudio@WEB」、クラウドのAmazon Web Services(AWS)を組み合わせたもので、RFPに明記していた「可能な限り自社独自の開発を行わない」という大方針にも合致していました。

増田様

少ないアドオンでも、以前の会計システムと同等のレベルを実現できたのはBiz∫にしてよかった点です。たくさんの番組を扱いますから、番組に付随する機能に用いるアドオンをBiz∫で利用できるのは役立ちました。

導入プロジェクト

更改はどのように進めていったのですか。

増田様

要件定義やプロトタイプを用いた試験など、事前の準備は入念に行いました。会計システムは、グループ全体で長く使っていくことを想定していましたので、いろいろな検証を行いました。

加藤様

今回のプロジェクトは、経費精算を「紙」という「アナログ」から、ペーパーレスで処理する「デジタル」に移行しています。アナログは、ある程度あいまいなところがあっても柔軟に運用することでかなり融通が利きますが、デジタルではそれが許されないことから、まずはそれらを明確にしていく必要がありました。そこで、プロトタイプを作ってはそれをテストして修正していくというプロセスを繰り返しながらブラッシュアップしていきました。

導入効果

番組制作の現場スタッフの方からはどのような評価を受けていますか。

加藤様

社内の同僚からは、新システムになってから、「経費精算だけのために、会社にわざわざ戻る必要がなくなったのでありがたい」、「領収書の写真をスマホで撮るだけで自動的に伝票に必要な情報を入力してくれるので、使いやすい」というお褒めの言葉を多数いただきました。通常のシステム導入と比較すると、運用開始後間もないかなり早い時期からそういう喜びの声が聞こえるようになったのも、印象に残っています。

増田様

番組プロデューサーは経費精算だけでなく、担当している番組ごとの損益管理、予実管理を見ています。以前はライセンスの都合で限られた人しかアクセスできなかったのですが、今はBIツールを使って必要とする全員にアクセスできるようになりました。また、自分が担当していない他の番組の情報は見られないなどの、細かいアクセス権も設定しています。

経理からみての効果はいかがですか?

増田様

今回は承認を得るフローもWeb化しました。紙の書類がなくなった今は、すべてシステム上で処理する形になっていますので、誰もが場所を選ばずに承認できるようになったというのは大きなメリットです。

またTBSグループ全体におけるガバナンスの強化も狙っていました。万が一どこかの会社で問題が生じた場合に、異なるERPシステムを利用していると、調査に時間を要する可能性があります。同じERPシステムに統一していれば、タイムリーに数字を確認し、問題点を洗い出すことができます。

働き方改革の面からも、紙がなくなったことで、経理も在宅で対応できるようになりました。

今後の展望

これからの展望をお聞かせください。

加藤様

プロジェクトを進めている間に、当初は予定していなかったグループ企業の合併や買収などもありましたが、当初予定していたグループ主要17社を始めとして、新しく加わったグループ会社でもすでにBiz∫の運用を開始しています。まだ運用を開始して1年もたっていないので細かい調整やチューニングも残っていますが、大きな問題もなくここまで稼働しておりホッとしています。今後もより一層現場にとって使いやすい、安定したシステムへと発展させていきたいと思います。

パートナーからの一言

TBSホールディングス様の目指していた新しい会計システムには、Biz∫とintra-mart、クラウドのAWSという組み合わせが最適と考え、提案させていただきました。大規模なプロジェクトになりましたが、会計システムのデジタル化に向けて要件定義やテストなどに時間と労力をかけて取り組んでいただいたTBSホールディングス様のお力添えがあってこそ達成できたと感謝しております。

もともとERPを得意としていたJSOLは、NTTデータ・ビズインテグラルが提供する国産ERP「Biz∫」を事業の大きな柱に育てようと注力し、ノウハウを蓄積してきました。大手のテレビ放送局、出版社などにBiz∫を導入した経験があり、メディア業界特有の会計業務についても知見を持っていたこともTBSホールディングス様に信頼をいただいた一因であり、それらすべてをこのプロジェクトに生かすことができたと感じています。

今後もTBSホールディングス様のデジタル化に向けた取り組みをご支援できればと存じます。

(株式会社JSOL)

企業紹介

株式会社TBSホールディングス
50年以上にわたり、ラジオ、テレビ、映画などを通し、報道、ドキュメンタリー、ドラマ、バラエティ、アニメなどの多くのジャンルに取り組む総合メディア企業です。近年は、インターネットを使った動画配信、出版、IPによる商品化、不動産事業も手掛けています。
https://www.tbsholdings.co.jp/

加藤様と増田様の集合写真

※本事例に記載の情報は、2021年10月時点のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。