商社・卸売業向けERP(統合基幹業務システム)における課題と解決策

直送取引や為替変動に対するリスクヘッジ、国ごとに異なる手続きなど、他の業界にも増して複雑な商社の業務にオールインワンで対応できる業務パッケージは多くありません。本コラムでは、商社・卸売業における課題と業務適合度の高いERP(統合基幹業務システム)による解決の道筋を解説します。

複雑な商社の業務に内在する課題

業種・業界によってビジネスのあり方は大きく異なっており、商社にも他の業界ではあまり見られない特徴があります。その1つが「直送取引」です。仕入れた商品をそのまま顧客先に納品する、在庫を持たない取引がかなりの比率を占めています。

納品までのスピードが重視されるがゆえにこのような形態を取りつつも、商社にとってみれば、無条件に顧客の要求に応えることはできません。顧客と取引先の双方に対して与信は大丈夫か、決済条件は適切かといった確認を行わなくてはなりません。

また、直接取引を中心としながらも、それだけでは顧客の注文に対応できず、いわゆる「見越商品」を仕入れるケースもあります。この場合、適切な発注・受注・管理が行われていなければ、大量の長期在庫を抱えることになりかねません。

取り扱う商品によっても管理すべきポイントが違ってきます。たとえば食品であれば、保管や配送するときの温度管理に気を配らなければなりませんし、賞味期限や消費期限に関するルールを厳重に守った上で納品しなければなりません。化学薬品では毒劇物かどうかによっても扱い方がまったく変わってきます。

海外から商品を輸入する、あるいは輸出する場合は、さらに業務が複雑化します。

まず為替変動に対するリスクヘッジが必須となります。加えて貿易取引ならではの大量の手続きを実行しなくてはなりません。国内の企業間であれば、見積書、注文書、納品書、請求書といったある程度標準化された手続きで取引を完了できますが、貿易取引に関しては、例えばコンテナ船への積み方や入庫するときのロット数にいたるまで、相手国の法規制や商習慣に応じた手続きを踏まなければなりません。

このように商社の業務では、的確な判断に基づいたコントロールが必要なポイントが非常に多く存在します。

独自性が高い商社の基幹システムにはテンプレートの活用がカギ

こうした商社が抱えている課題にオールインワンで対応できるパッケージソフトウェアは多くありません。そのため、多くの企業ではオフシステムでExcelなどの個人ツールを使いながら、担当する商品や取引先ごとの管理やチェック行っているケースが散見されます。

しかし、これでは属人的な対応に陥ってしまいます。全社的に一貫した統制を効かせ、業務効率を高めるためにもシステムによるサポートが不可欠です。

そこで検討すべきが、販売管理や輸出入、会計、ワークフローなど、これまで分断されていたシステムを共通基盤に統合するというアプローチです。こうしてマスタやトランザクションを一元化することで、商取引の効率化、スピーディな経営判断に寄与する基幹システムを構築することができます。

とはいえ複雑な商社業務をERPに実装するとなれば、一般的には大量のカスタマイズやアドオン開発が発生してしまうので、これも可能な限り抑えなければなりません。後々のバージョンアップや各国の法規制の改正などに対応するのが困難になってしまうからです。

そこでおすすめするのが、実際の商社で行われたERP導入プロジェクトをベースにテンプレート化されたソリューションをあわせて活用するという方法です。これにより独自のカスタマイズやアドオン開発によらずとも商社特有の業務要件に対する高い適合率を得ることができ、短期・低コストでのシステム導入が可能となります。

Biz∫商社/販社向け貿易テンプレートの特長

NTTデータビズインテグラルが提供するERPパッケージ「Biz∫」では、商社特有の業務要件を踏襲した「Biz∫商社/販社向け貿易テンプレート」を提供しています。有力商社における数多くのERP導入プロジェクトを通じて培ってきたノウハウが組み込まれたこのテンプレートをシステム開発のベースとすることで、業務適合度の高い基幹システムを、追加開発を抑えながら構築することができます。具体的には次のようなテンプレートが用意されています。

・為替予約管理:為替予約登録から為替予約引当、為替予約管理まで、輸出入における為替予約業務を幅広くカバーします。契約段階や売上仕入段階でそれぞれ異なるレート種別の外貨を組み合わせ、為替予約の引当を可能とすることで、リアルタイムかつ二重入力のない為替予約残管理が可能です。

・輸入決済管理:仕向送金申請から海外送金依頼、代金決済、仕入後処理まで、輸入取引における仕向送金決済業務に一貫して対応します。

・輸出決済管理:輸出取引における被仕向送金決済業務と輸出手形決済業務の両方に対応しています。

・外為共通管理:貿易取引にかかわる外為銀行諸掛の即納および後納の処理を幅広くカバーしています。さらに通常の外貨評価替機能に加え、外貨建て取引の種類に応じた外貨評価機能を備えています。

・決済支援/損益管理機能:直送取引および在庫販売に対し、契約単位での売り・買いの決済条件指定が可能です。さらに登録済み売上伝票に対して変更後の単価を基にした金額調整を行う「遡及単価訂正」、取引先ごとに一定期間の取引実績に応じた値引や値増による売上高・仕入高の調整を行う「一括値引値増」の機能も備えています。Biz∫の簡易BI機能である「ViewCreator」上で部門ごとの損益を把握できる「部門別損益管理」の機能も備えています。

・貿易帳票出力機能:システムに入力された情報をExcel形式の貿易帳票レイアウトに変換した後、情報補完を行うことで情報の二重入力を防止するとともに貿易帳票独自に必要な情報入力を可能とします。

・与信限度管理機能:受注・出荷登録時の限度額チェックに加え、部門間で限度額の融通を聞かせる機能や警告管理表の出力に対応しています。

・在庫バランス管理機能:在庫取引において在庫金額が過剰にならないように、在庫金額の上限を管理し、承認を得ることができる機能を備えています。

商社/販社向けERP貿易テンプレートの構成内容
商社/販社向け貿易テンプレートの構成内容

このようにBiz∫商社/販社向け貿易テンプレートは、受発注から決済まで商社/販社の幅広い貿易手続をカバーしています。もちろんすべてのテンプレートを導入する必要はありません。標準機能である為替予約管理と輸入決済管理をベースに、あとは必要な機能のみを選択することができます。

また、これらのテンプレートはもともとBiz∫が持っている機能と連携し、大きな相乗効果を発揮します。たとえば各社ごとのマネジメントの視点にあわせてノーコーディングで簡単に管理画面のレイアウトを変更できること、ワークフローと一体化した運用が可能であること、ユーザーに対してプッシュ型の通知を行えることなどは、さまざまな商社からも特に高い評価を得ています。

豊富な標準機能とシステム共通基盤(intra-mart)を備えたBiz∫に商社の業務要件に対応した機能を拡張
豊富な標準機能とシステム共通基盤(intra-mart)を備えたBiz∫に商社の業務要件に対応した機能を拡張