この記事では、購買業務の改善を検討している調達部門や情報システム部門の皆さんに向けて、集中購買によるメリットや効果、集中購買を支えるソリューションについてお伝えします。皆様の課題解決の一助となれば幸いです。
企業の支出の一部を占める購買コスト。これが削減できれば、結果的に利益向上につながります。しかし、「購買コストをどうすれば削減できるのか?」その答えを探し求める企業は多いです。特に最近では、ペーパレス化や内部統制の強化も求められている中、「購買業務の改善方法がわからない」という声も増えています。
結論、拠点ごとに仕入先に発注をしている「分散購買」から、本社・購買部門が窓口となり全社の購買を担う「集中購買」へ切り替えることで、大きなメリットを享受できる可能性があります。
タクトシステムズ株式会社
シニアコンサルタント
渡辺 誠
ERP導入プロジェクトに係わる第一人者。過去に40社以上のERP導入プロジェクトに携わり、豊かな知識と経験を備えている。特に、会計領域を係わる知識は豊富であり、顧客からの信頼はもとより、ERPメーカーとの繋がりも長けた人材。「会話の中から、本当に求めているモノは何かを考え行動すること」をモットーにお客様との業務に取り組む。
「集中購買」と「分散購買」 のメリットデメリットを比較
集中購買と分散購買はそれぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが優れているというものではありません。企業規模や仕入れる資材によって、それぞれの購買方式を上手く使い分けることが大切です。
以下は、それぞれの購買方法のメリットとデメリット、および向いている資材の例です。
集中購買(全体最適) | 分散購買(個別最適) | |
メリット | 1.大量購入を武器にし、仕入れ値などの取引条件を有利かつ効率的に進めることができる 2.一元管理により業務の標準化や効率化が進み、コスト削減が可能になる | 1.短納期による発注に対応しやすい 2.各部門・事業所が独自に関係を築いている取引先へ発注するため、融通を利かせてもらえる場合がある |
デメリット | 1.各拠点への納入に時間がかかる 2.緊急の発注に対応するのが難しい | 1.仕入単価にばらつきができる場合があり、無駄なコストがかかることがある 2.業務履歴管理が一括で管理されないため、コンプライアンス違反や不正防止を防ぐのが難しい |
向いている資材 | 1.高額資材 2.全事業所で共通に使用される資材 3.大量購入する資材 4.交渉次第で価格や納期が有利になる資材 | 1.低額資材や特注の資材 2.定価で仕入れても影響のないもの |
集中購買が有利な場合は以下のようなケースが挙げられます。
・高額資材や、全事業所で共通に使用される資材などのように、一定の量を必要とする資材である場合
・交渉次第で価格や納期が有利になる資材である場合
・購買手続きや業務をまとめてできるため、各事業所の発注担当者の手間を減らせる場合
・管理面でのメリットが多数あるため、業務の標準化や単純化が推進しやすくなる場合
集中購買は、大量購入を武器にし、仕入れ値などの取引条件を有利かつ効率的に進めることができるため、価格の取引条件が有利になることが挙げられます。また、一括で発注すれば、購買手続きや業務をまとめてできるため、各事業所の発注担当者の手間を減らせるという利点もあります。
集中購買による具体的なメリット①業務効率化
分散購買の場合、各拠点が個々に購買業務を行います。これによりリードタイムを短くすることができますが、購買業務のプロセスは各拠点任せとなり、統制がとれないことが多いです。その結果、購買業務の見える化ができず実態把握や分析が難しくまた、内部統制のレベルも低く、業務改善や効率化は部分最適にとどまってしまいます。
これに対して集中購買は、本社で一括に購買業務を行うことで業務の効率化を実現します。そして、集中購買システムの導入により、注文書や見積書等のペーパレス化を図り、電子承認機能を利用することで内部統制の強化も実現します。
集中購買による具体的なメリット②コストの削減
集中購買により、購買コストの削減が可能です。ロット買いやまとめ買いによる割引が受けられるためです。さらに、本社で購買データを一元管理できるため、データを用いた支出分析に基づいて効率的に発注が可能となります。その結果、サプライヤーとの価格交渉もスムーズに進めることができ、さらなる購買コストの削減が可能となります。
また、集中購買によって、各拠点の発注者の作業コストも削減できます。購買手続きや業務が本社購買部門に集中することで、業務の効率化が進み、結果的に作業コストの削減につながるのです。
集中購買による具体的なデメリット
メリットの多い集中購買ですが、下記のデメリットも生じることを忘れてはいけません。
・納期の遅れ
・対応の柔軟性の低下
分散購買と比較し、発注から納品までの時間がかかるため、急ぎの場合は不向きです。また、一箇所の窓口で全社の購買を取りまとめるため、各部署のニーズに対応する柔軟性が低下することがあります。
集中購買業務を支えるソリューション
集中購買業務を行うにしても、上述したデメリットを最小化するための仕組みや、業務をサポートするシステムが必要となります。当社では、Biz∫の購買モジュールのカバーしていない領域をテンプレート化した「ProFront」をリリースしました。
下記図の通り、「ProFront」は、社内業務の購入依頼、発注や仕入先からの見積取得の購買業務のフロント業務だけでなく、検収、請求書確認の後処理業務までをカバーしております。
ProFrontの特長
・各部門からの申請を購買部門が集中管理。見積依頼、仕入先選定など集中購買業務に特化した機能を標準搭載。
・シームレスに購買申請~発注~支払処理を実施
・マスタを共有しているため、マスタの二重登録やデータ連携不要で運用コストを削減
・テンプレート活用の半スクラッチ開発となるため、お客様独自仕様などの詳細要件を含めた実装が可能
・ワークフロー機能を標準実装しているため、独自の承認ルール等、細かい要件への対応も可能
ProFront導入によるメリット
・集中購買による購買プロセス改善(人員削減、内部統制強化)
・仕入原価の削減(仕入先との交渉を優位に)
・仕入原価の適正価格の分析、仕入先との交渉材料
ソリューション導入の効果(導入事例)
当社が導入した某サービス業様では、当社の集中購買ソリューションの導入により、下記の効果を上げていただきました。
①業務標準化および内部統制の強化
当社ソリューションの導入により、業務フローの標準化/統一化が実現し、手作業で行っていた業務もシステムで対応できるようになりました。さらに、標準装備されているワークフロー機能により内部統制の強化も実現しました。
②ペーパレス化による業務効率の向上
システム化により、システム内で全て行うことが可能となり、資料の検索性が向上し簡単に必要な書類を閲覧することが可能となりました。また、EDI機能でお客様との見積りのやり取りも電子され、一元で見積比較が可能となり、業務効率が向上しました。
導入事例はこちら>>https://www.biz-integral.com/showcase/keiyogas
集中購買ソリューションを検討されている企業様に向けて
集中購買への切り替えおよびソリューションの導入は、企業の経営層が積極的に関与することが求められます。その理由は、導入による利益向上だけでなく、内部統制の強化という企業経営に直結する課題を解決するためです。経営層が率先して取り組むことで、スムーズな導入が可能となります。
導入後も定期的なレビューを行い、システムの運用方法を改善することで、さらなる効果を引き出すことができます。購買業務プロセスの変革やシステム導入は一度きりのプロジェクトではなく、継続的な改善を行うことで最大の効果を発揮します。
本記事が、購買コストの削減や業務効率に向けたアクションの後押しになれば幸いです。