多様な店舗形態、大量のトランザクションに適合するERP

小売業では、多様な店舗形態と大量のトランザクションといった課題を持っています。
こうした課題は、全社的な意思決定の精度を向上し、経営をスピードアップする管理会計を実現する上で不利になる場合もあります。
グループマネジメント高度化の観点から本社と店舗間の会計・経理業務の統合を進めることが、時代の変化に即応するためのビジネスモデル転換、ひいては競合との差別化を実現するためのDXへの足掛かりとなります。

1.多様な店舗形態

 1-1.フランチャイズ店舗の管理

フランチャイズチェーンでは、大きく直営店とフランチャイズ加盟店があります。
ビジネスとしては、フランチャイズ本部で開発した経営ノウハウ、商標・サービスマーク、継続的な指導・援助などが
加盟店(フランチャイジー)に提供され、加盟店はその使用対価として、ロイヤリティを本部(フランチャイザー)に支払う仕組みとなっています。そのため、フランチャイズにおける会計では、本部・加盟店間の取引処理において、オープン・アカウント制度を踏まえる必要性がありました。(下図イメージ)

フランチャイズにおけるオープン・アカウントによる精算
オープン・アカウント制度を踏まえたフランチャイズ会計

構築事例として、フランチャイズ特有の業務に対して、Biz∫会計の標準機能とアドオン開発を組み合わせて、以下の機能に分割して開発を行い、フランチャイズ会計への適用及び、仕訳自動生成による事務の煩雑さの解消を図りました。

(1)オープン・アカウント方式
(2)ロイヤリティ計算処理
(3)月次処理機能の拡充(精算書や確認帳票)

まず(1)のオープン・アカウント方式では、Biz∫会計標準機能の組織マスタ管理・本支店仕訳管理の活用とともに、
 ・店舗業態の把握するためのマスタ管理機能
 ・本部・加盟店間の取引時におけるオープン・アカウント科目の自動仕訳生成機能
を組み込むことにより、オープン・アカウント方式を管理する仕組みを実現しました。

次に(2)のロイヤリティ計算処理では、フランチャイズ契約に基づくロイヤリティ率がグループ各社で異なることを踏まえ、
 ・ロイヤリティ率に係るマスタ管理機能
 ・マスタ管理されたロイヤリティ率を基にした自動計算及び自動仕訳生成機能
を組み込むことにより、ロイヤリティ計算処理を実現しました。

最後に(3)の月次処理機能の拡充では、 Biz∫会計標準機能の元帳管理機能をもとに、
 ・(前述の)オープン・アカウント仕訳の集計機能
 ・加盟店に向けた精算書データ出力機能
 ・精算書に紐づく帳票管理(フランチャイズに係る取引に特化した仕訳帳、債権債務、損益計算書等)機能
を組み込むことにより、フランチャイズに係る月次処理の煩雑さの解消と円滑化を実現しました。

1-2.ショッピングセンターの精算管理

小売業では、ショッピングセンタ(SC)ーの中に店舗を構える形態があり、店舗の運営形態も直営店、直営委託先が運営する店舗、代理店が運営する店舗と複数の形態があります。

代理店が運営する店舗での精算業務

特に代理店が運営する店舗の場合は、代理店、ショッピングセンター(SC)、小売業社間で図1のように、

①代理店からショッピングセンター(SC)へ売上金を預託、
②預託された売上金から賃料、諸経費を相殺した金額をショッピングセンター(SC)から小売業社に送金、
③小売業社へ送金された金額から代理店への立替金額当を相殺し、その差額を代理店へ返金

といった、精算業務のステップが多く、店舗精算業務の効率化が必須でした。

また、特に代理店が複数店舗を運営していることも多く、各店舗の債権債務を相殺した上で代理店へ返金する店舗間相殺も効率化が必要です。

構築事例として、精算業務を効率化する為に、Biz∫会計の標準機能とアドオン開発を組み合わせて、精算業務を以下の機能に分割して開発を行い自動化を図りました。

①ショッピングセンター精算(精算用に店舗売上の確認と精算入力が同時に出来る画面を開発)
②消込(債権管理の自動消込を活用)
③代理店への立替請求(代理店への立替を自動計上するバッチ処理を開発)
④店舗精算・店舗間相殺(代理店店舗ごとの精算と代理店の店舗間の相殺を行う画面を開発)

精算入力に関しては、Biz∫会計のパターン登録機能を活用しました。

店舗ごとに精算項目が定型化していたので、精算項目をパターン登録し、精算店舗を入力すると精算項目のパターンが呼び出され、ユーザは金額のみを入力する形となり、精算入力の効率化が図れました。

また、画面上に店舗の売上情報を同時に表示するようにして、店舗の売上を確認しながら精算金額を入力出来るようにし、精算金額を誤らないようにしました。

2.大量トランザクションの発生

小売業では、店舗別、商品カテゴリー別のロス金額、粗利金額の管理が重要です。

そのためには、大量のトランザクションデータの迅速な集計、計算処理を経たデータの把握と活用が求められます。

主要なトランザクションデータの例としては、店舗別商品カテゴリー別の売上データ実績集計、仕入、費用、店舗間移動、商品カテゴリー間移動、棚卸、リベート、売価変更、物流のセンターフィー、などが挙げられます。

特に、小売業では原価金額の算出方法が商品カテゴリー毎に異なるため(生鮮等は売価還元法)、単純に多種のトランザクションデータの集計と計算数値算出では十分ではなく、目的に合わせたデータ抽出と計算処理、リベートの店舗間按分数値でのロス金額、粗利金額計算が管理上必要になります。

また、軽減税率制度の導入により、同一商品カテゴリー内でも異なる税区分での管理が発生し、これまで以上に大規模トランザクションの適正かつ効率的な処理が求められている状況です。

システム構築事例として、以下に記述する商品管理システムが挙げられます。

多様なメッシュの大量トランザクションデータの集計と店舗損益管理に必要な処理機能を包含したシステムであり、主なポイントは以下2点です。

(1)各種データの集約受入
(2)ロス計算・在庫計算による管理表出力

これらについてもう少し詳細に見ていきましょう。

(1)各種データ集約受入

店舗や物流等の各システムから売上、仕入、費用、移動、売価変更、リベート、センターフィーデータを受入れ、アイテム単位から店舗別商品カテゴリー単位に集約します。

売上、仕入データについては、ロス計算、在庫計算に必要な売価、原価の両建てでのデータを受入れます。

リベート、センターフィーデータは、データ受入処理のタイミングで損益管理対象の店舗、商品カテゴリー単位に按分、データ振分けを実施し店舗損益管理単位のデータメッシュで管理をしています。

(2)ロス計算・在庫計算による管理表出力

各種受入したデータおよび棚卸データをもとに、店舗別商品カテゴリー別のロス計算、在庫計算処理を実現しています。

特に、売価還元法による原価率計算処理をシステム化し、商品カテゴリー単位での適正なロス金額、在庫金額の算出を行います。

これらデータ集計、計算処理結果を、店別損益管理用に店別商品カテゴリー別、商品カテゴリー別店別として出力可能としています。

小売業でのシステム構築例

Biz∫で小売業の課題をサポート

NTTデータ・ビズインテグラルの「Biz∫」は、グループマネジメント高度化の観点から、本社と店舗間の会計・経理業務の統合を実現します。本社および各店舗が処理している仕訳、残高、月次状況などのデータをグループ連結データベースに集めて一元管理することで、企業全体の情報を可視化することができます。

Biz∫はシェアードサービス形態での利用に適しており、同じ基盤を本社と各店舗との間で効率良く共同利用することが可能です。また、全社共通のマスタを配信したり、本社と店舗間の取引を相殺したりといった処理にも対応し、企業全体としての効率的な業務運用をサポートします。

加えてBiz∫ならではの強みとなっているのが管理会計への対応です。Biz∫会計は自由に設定可能な20種以上の「分析コード」を持たせることができ、パッケージの仕様上の制約を受けることなく管理会計のニーズを満たすことができるのです。

組織別や地域別の損益、あるいは店舗ごとの損益といったデータは、従来から本社側でも管理できていましたが、Biz∫会計の分析コードを用いることで、製品別や顧客ごとの損益などより細かい粒度のデータを把握できるようになります。

このような機能を生かして、Biz∫は複雑な店舗形態に対応したワークフローやシステム間連携を実現し、ビジネスの変化に対応できる業務体制の構築を支援していきます。