鉄道事業の効率化からグループ経営の高度化まで一貫して対応する基幹システム

鉄道事業者は、本業である交通・運輸事業だけでなく、流通やサービス、不動産など提供する事業は広範囲に及んでいます。グループ会社や保有する固定資産の数や種類も多いため、特有の業務課題が発生します。そうした課題を解決するための共通基盤として基幹システムのあるべき姿を見定めるとともに、鉄道事業の固有業務要件にいかに対応していくべきかを解説します。

2つの側面を持つ鉄道業の特徴と課題

鉄道業には大きく2つの側面があります。1つは本業である鉄道事業者としての側面。もう1つは鉄道を中心に多角的な事業を展開している企業グループとしての側面です。それぞれにどのような特徴があるのでしょうか。

まず鉄道事業者としては、用地取得から固定設備の建設、車両製造からメンテナンスなど、常に複数のプロジェクトや工事が年度をまたいで進行しています。一方の企業グループとしては、交通・運輸(鉄道/バス/タクシーなど)を中心に流通(ショッピングセンター/スーパー/コンビニ)、サービス(外食/旅行/ホテル/エンターテインメント)、建設・不動産、保険などを展開し、総合生活産業として事業の安定化や収益性の向上を図り、グループ一体でバリューチェーンを構成しています。これらの鉄道業と企業グループの2つの側面で、抱えている課題も異なります。

・鉄道事業における課題

まず鉄道事業では、前述の通り年間を通じて常に複数のプロジェクトや工事が並走しているため、固定資産の竣工精算、工事・資材の発注から検収・支払など、煩雑な経理処理が非常に多く発生します。

加えて事業所・駅舎・設備など、広範囲におよぶ現業拠点に取引の発生源が分散していることも大きな課題です。経理処理に必要な申請書や伝票・証憑の管理、決算期をまたいだ未収・未払の顛末管理、小口現金の管理などの業務が煩雑化するとともに、伝票や証憑を紛失してしまうといったリスクが内在しています。

また、鉄道業は鉄道事業会計規則に基づき、開示・申告や運賃計算の根拠として定められた配賦ルールや集計ルール(款項目節)にて処理を行う必要があります。こうした業種固有の業務(資材購買・竣工・配賦)に対応できるシステムを独自に作り込んだ結果、経年とともにブラックボックス化していき変化への対応力を失い、維持管理に多大なコストを費やしている企業が少なくありません。一方では鉄道業固有の業務をシステムに実装できておらず、属人化した手作業で対応しているケースも散見されます。

・企業グループとしての課題

企業グループの側面では、規模や業種の異なるグループ全体をいかに標準化されたシステムで統合し、業務品質やコスト、ガバナンスを最適化するかが最大の課題となります。

経理業務やシステム運用などの間接業務についてはグループ内のシェアード会社を戦略的に活用し、グループ各社のリソース不足を補うとともに、普遍的な役割である「より早く正確な会計報告と牽制」を実現すべく統制や決算早期化に取り組んでいます。

しかし、そこでボトルネックとなるのがグループ間取引の把握です。グループ全体の事業の安定化や収益性の向上に向け、グループ内で統合されたデータを活用し、連結経営管理の高度化を図り、働き方改革やDXにつなげていく必要があります。

鉄道業の課題解決に寄与するERP活用のあり方

これらの課題を解決するためには、まず多角化経営を支える共通システムの観点から、親会社である鉄道事業会社およびグループ会社を業種業態や規模で分類し、標準化や共通化が可能な範囲を見極めていきます。このとき各会社のフロント業務は対象とせず、経理業務に絞った形の水平統合型でシステムを検討するのが肝要です。

鉄道業の課題解決に寄与するERP活用のあり方
グループ会社を「業種・業態」で分類し、おおよその標準化・共通化範囲を見極める。現行業務やシステム化状況とその課題に基づき、標準化・共通化範囲を精査・決定

コアERPの領域は業務の見直しを前提として極力アドオン開発やカスタマイズを行わないこととし、データの発生源や分析などの領域は環境変化や技術の進化に合わせた最適な製品やサービスを採用し、柔軟性と拡張性を確保します。

このグループ共通となるコアERPの基盤は、もちろん本業である鉄道事業の固有業務(資材購買・竣工・配賦など)に適用することも可能です。

ただしグループ内には規模や業態の異なるさまざまな会社が混在するため、入力・承認業務を分散化するのかあるいは集約化するのかといった検討が必要です。それに合わせて、グループ全体のIT統制レベルを確保する視点と施策が重要です。加えて決算の効率化・早期化を行うために、グループ間取引を把握する仕組みを整備し、取引を計上した時点でグループ間の正しい入力が即座に行われるようにする施策の検討が必要です。

このようにグループ経営の高度化に向けてはデータ活用がきわめて重要であり、それを支えるシステム基盤には、会計データ(実績及び予算・見込)の可視化とともに経営管理に必要な分析軸を付与できることが求められます。

また、ERP領域におけるデジタル技術の活用に向けては、単に先進技術ありきで製品を採用するのではなく、あくまでも実業務での定着化を大前提として対象範囲や目的、期待効果を明確化します。こうして策定された基本方針に基づき、OCRやAIを活用した伝票起票の自動化、クラウドサービスを活用したペーパレス化、紙のデジタル化など、実効性のあるデジタル技術の活用施策を検討します。

AI-OCR技術を活用し、受領した見積書を現場で電子化して竣工計算業務を効率化

鉄道事業の固有業務要件に対応した「Biz∫鉄道ソリューション」を提供

NTTデータビズインテグラルが提供するERPパッケージ「Biz∫」は、国産ERPならではのきめの細かい機能設計により、鉄道業の要求に対しても豊富な標準機能による高い業務適合率を実現します。

また、業務領域ごとに導入したソリューションの疎結合を可能とする一方、独自要件に対してはBiz∫が標準で保持する各種拡張方法を活用することで、パッチ適用やバージョンアップの影響を低減するなど、機能拡張も容易に行うことができます。

さらにintra-martを統合基盤として、販売・会計・人事などの基幹業務システムとポータル、ワークフローなどの情報系システムを一体で運用することが可能です。必要な情報をポータル上に可視化することで、業務効率化やスピーディな業務判断に寄与します。

こうした特徴を生かすことで、鉄道業のグループ経営の高度化を支える会計領域はBiz∫の標準で対応することができます。そして本業の鉄道事業の固有業務要件については、鉄道業における長年のBiz∫の導入・運用実績から培われたノウハウやベストプラクティスを体系化した「Biz∫鉄道ソリューション」を提供することで対応します。

鉄道事業では、例えば「工事で必要な資材を購入し、必要に応じて工事に払出を行う」、「建設工事の予算策定・稟議・実行管理」、「工事発注・検収の管理」、「建設仮勘定を固定資産の単位に分割し、費用/資産の分類、共通費を配賦して固定資産に計上する」、「固定資産に関して取替法での償却に対応する」といった固有の業務要件が発生します。こうした工事・資材管理から工事竣工に伴う分割、共通費配賦、固定資産化に及ぶ業務領域にも対応可能です。

鉄道事業の固有業務要件に対応したテンプレートのイメージ
鉄道本体で必要となってくる工事・資材管理から工事竣工に伴う分割、共通費配賦、固定資産化の領域を体系化して提供

このように複雑多岐に渡る鉄道業の業務要件に対しても、Biz∫では、グループ経営に適用し、なおかつ拡張性の高い標準機能に、業界特化の「Biz∫鉄道ソリューション」を適用することで、フィット率の高い基幹システム構築を実現していきます。