建設業のDXとシステム統合を実現するためのERP

少子高齢化に起因する慢性的な人材不足は建設業でも深刻な問題となっています。危機感を持った政府も「建設業の働き方改革の促進」「建設現場の生産性の向上」「持続可能な事業環境の確保」を促すべく、建設業法の改正に踏み切りました。この動きを受けて、多くの建設事業者の間でもDX(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)に対する機運が高まっています。建設業界に今求められているのは、古い法令や業界ルールによって部門ごとに個別最適化された形で構築・運用されてきた各システムを統合し、一元的なデータ管理を可能とするモダナイズを推進することです。

建設業向けERP

建設業界全体でDXへの機運が高まる

これまで日本の建設業界は、1949年に制定された建設業法の規制を受けてきました。建設業法は「建設工事の適正な施工の確保」「発注者に対する保護」「建設業界の健全な発達促進」などを目的とするもので、簡単に言えば手抜き工事や中抜き工事、協力会社業者いじめなどの不正行為を抑制するためのルールの順守が厳しく義務付けられています。

建設業DX

こうした背景から、すでに導入・運用されているさまざまなITシステムも、建設業法のルールや部門ごとに個別最適化された形で業務を支援する仕組みとなっています。

ただし、こうした法令や業界ルールにのっとったことも影響して、紙の伝票を前提としたワークフローを補完するシステムになっているなど、デジタル業務への変革の足かせとなっていることも否めませんでした。

そこに新しい風を吹かせるべく2020年10月に施行されたのが、改正建設業法です。国土交通省によると、その狙いには、長時間労働が常態化している建設業界における働き方改革を促進する意図、また急速に進む高齢化や若者離れに歯止めをかけるため、限りある人材の有効活用を通じた建設現場の生産性向上を促進しようという意図などが込められています。

これを踏まえて、保守的だった建設業界の間でも「建設テック」や「i-Construction」といったキーワードが注目されるようになりました。3Dモデルを活用したBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)といったコンセプトのもと、調査・測量から設計、施工、維持管理に至るライフサイクル全体の業務を効率化する新たな建設手法の導入が加速するなど、DXに対する機運が急速に高まっています。

しかし、旧態依然としたバックオフィス業務や基幹システムを一足飛びに変更するのは容易なことではなく、各社の悩みの種となっています。

個別最適で構築・運用されてきた各システムを統合

建設物は1社単独で作られるわけではありません。元請けとなるゼネコン(総合建設業者)の指揮のもと、実際の施工は二次や三次の協力会社(工事専門会社)、そこから手配された個人事業主である技能工などが担っています。

こうした建設特有の業界構造も相まって、特にゼネコンのバックオフィス業務は、引合い対応から受注、原価管理、発注、支払、財務、決算まで広範囲にわたります。

建設業に今求められているのは、部門ごとに構築・運用されてきた各システムを統合し、一元的なデータ管理を実現することにほかなりません。これにより、例えば夜間バッチを用いて複数のシステム間でデータを受け渡していたタイムラグを解消してスムーズな経営管理を実現するなど、今後のDXへの道筋を立てることが可能となります。NTTデータ・ビズインテグラルが提供する「Biz∫」は、こうしたシステム統合を実現するための基盤です。

機能の一例として、多様な決済手段への対応が挙げられます。前述した通り、建設業界ではこれまで紙の伝票や手形を用いた決済が行われており、支払い形態も非常に複雑化していました。「Biz∫」は複数の業務を横断した取引先マスターを持つことで、多様な決済要求に対応できます。加えて「Biz∫」に標準搭載された会計連携やワークフロー機能を活用することで、紙にハンコを押して承認を行ってきた業務処理のペーパレス化を推進することができます。

広範な業務プロセスをカバーした建設業統合基幹モデル

「Biz∫」の会計パッケージである「Biz∫会計」をベースに、NTTデータグループが培ってきたノウハウを実装した統合ERPソリューション「imforce建設業統合基幹モデル」が、建設業におけるDXの取り組みをさらに前進させています。

imforce建設業統合基幹モデルの最大の特徴は、建設業における広範な業務プロセス全体をカバーしている点です。引合い対応や見積りなどの営業活動から受注管理、協力会社の工事専門会社への発注や資材の購買を含めた原価管理、入金管理や支払管理などの経理業務、さらに最終的な財務会計や決算まで、これまで個別最適のシステムで行っていた業務を共通インターフェースのもとで統一できます。さらに周辺システムのデータについても同じ基盤に集約し、統合管理を実現します。

建設業向けERPパッケージ「imforce建設業統合基幹モデル」のシステム構成図
建設業に求められる業務機能を網羅的にカバー

imforce建設業統合基幹モデルの構造をもう少し詳しく説明しましょう。アプリケーション基盤としてintra-mart および「Biz∫APF」を使用し、その上に個別原価計算やJV(ジョイントベンチャー)、建設業法に則った購買・支払など、建設業特有の業界慣習や法規制に対応可能なアプリケーションが実装されており、「Biz∫会計」とシームレスに連携する仕組みとなっています。このためユーザーは、「Biz∫会計」と同じ見た目と操作感でimforce建設業統合基幹モデルを利用することができるのです。

経営者はもとより工事の責任者、営業担当者、経理担当者もそれぞれの視点から、事業全体の状況をリアルタイムに近い形で俯瞰することが可能となります。例えば協力会社への支払いを承認する際に、経理担当者は発注データや経費データなどの原本にまでさかのぼって妥当性を確認することができます。

システムをモダナイズし、経営層の意思決定を支援

さらにimforce建設業統合基幹モデルは、引合い物件による売上・粗利予測や見込原価を用いた工事単位の粗利予測、実績原価・売上高曲線による売上・粗利予測など、事業のさまざまな段階での収益を精緻に予測可能な仕組みを豊富に装備しています。これらの情報を集計して事業計画情報を立案し、事業全体の着地見込を把握するなど、工事現場および経営層の速やかな意思決定や対策立案に役立てることができます。

また、ローコードの開発支援ツール「Biz∫APF」ワークベンチを活用し、企業固有の業務要件に柔軟に対応することも可能です。従来型のパッケージシステムでは対応が困難だった原価管理、購買領域などのシステム化要件にも応えることができます。

その意味でintra-martと「Biz∫ APF」、さらに「Biz∫会計」を内包したimforce 建設業統合基幹モデルの進化に終わりはありません。継続的なブラッシュアップを重ねることで旧態依然としたシステムから脱却し、見通しが立たない将来で直面するさまざまな課題にも柔軟に対応できる、理想的なDXを目指すことができます。

※「imforce」は、株式会社NTTデータビジネスシステムズの登録商標です。