~九州を起点に「IT×流通」で徹底したローコスト経営 売上1兆円を見据えグループ14社の会計システムを一斉統合~

創業の地、福岡県を起点にディスカウントスーパーを全国展開するトライアルカンパニー。

「エブリディ・ロー・プライス」や「24時間営業」など、お客様が求めるサービスを次々と打ち出し、食品から衣料品、家電、雑貨、医薬品まで毎日の暮らしに必要な品々を取り揃えています。現在全国に約200店舗を構え、過去10年間で売上3倍と飛躍的な成長を遂げています。

同社の強みはリテールテクノロジー。創業当時から「ITを通じて流通を変える」ことを目標に掲げ、購買ビッグデータ分析を早くから取り入れ、仕入れや物流、マーケティングに活用することで低価格な商品提供を実現しています。

2015年9月には、さらなる経営の効率化を目指して分社化を決断、トライアルホールディングスを持株会社とするグループ運営体制に生まれ変わりました。

スーパーセンター トライアル店舗

スーパーセンター トライアル店舗

トライアルカンパニー本社

トライアルカンパニー本社

分社化と同時に誕生した株式会社トライアル・シェアードサービスは、事務機能のシェアードサービス提供を目的とした新しい会社です。現在、本社およびグループ各社の経理業務を中心に、総務、新店購買、品質管理、リスク管理、を一手に担っています。

同社では、財務会計管理システムとして「Biz∫」を採用し、わずか6か月間で本社とグループ12社の一斉導入に成功しました。続く2社の追加導入もスムーズに完了、シェアード化により事業拡大に資する効率的なグループ経営の仕組みが整いました。

導入に至るまでの経緯と新システムの活用状況について、伺いました。

導入前の課題と効果

導入前の課題

  • 運用コストが高止まり、システムサポートが常に必要
  • 周辺システムとの連携が悪く人的作業の増大や属人化
  • 決算業務に時間がかかり、経営データをタイムリーに収集できない

導入効果

  • システム運用にかかる業務を削減、付加価値の高い業務にシフト可能に
  • 業務負荷を削減し制度改正などに迅速に対応
  • 決算早期化へ目途、グループ経営管理の高度化を実現

導入背景

新たな財務会計管理システム導入の経緯を教えてください。

矢野様

小売事業の好調を受けて業績が伸張し、売上額が4000億円規模に拡大しています。

全国の出店加速に伴い、取り扱うデータ量も急激に増大し、将来に向けた対応が急務でした。そこで、基幹業務システムの再構築とタイミングを合わせ、財務会計管理システムの刷新を決断しました。

従前は、外資系パッケージを利用したシステムを7年程利用していましたが、主に3つの問題に直面していました。1つ目は、サポートなど運用にかかる費用が高額であった点、2つ目に、設定が複雑で自社でのシステム変更が困難であった点、3つ目は、周辺システムとのデータ連携が悪かった点です。

グループ各社では、本社と異なるパッケージを利用していたこともあり、データの連携作業に人手がかかり、運用の属人化などの弊害も生じていました。

当社の「エブリディ・ロー・プライス」を支える土台は、ITを駆使したローコストオペレーションにあります。「より安く、より良いものをお客様に提供する」という志を実現すべく、更改に踏み切りました。

代表取締役社長
矢野 博幸様

梶山様

当時、外資系パッケージを導入した狙いは、小売業向けの基幹業務システム導入の標準モデルを作り、将来的に国内外の小売業向けにベンダーと協業して導入サービスを外販するという構想実現のための第一歩でした。しかしながら、成果を出すことができず構想半ばで頓挫してしまいました。

従前のパッケージは、大量なデータ処理に適しているなどの長所がありましたが、自社の技能不足もあり使いこなすまでに至りませんでした。制度改正や会社追加など設定が必要な際は、自社にノウハウがないため外部委託せざるを得ず、費用が都度発生し運用コストが高止まりしていました。

しかし、立ち直りは早かったですね。当社には、「企業は人なり」と人材を大切にする風土があります。「失敗した時は徹底的に分析し、対策を練ってリベンジしよう」というトップの決意のもと、全社一丸となって業務システムの再構築に大きく舵を切ったのです。

失敗からの再挑戦、まさに「トライアル」精神だと思います。システム再構築においてはどのような目標を立てましたか。

矢野様

企業の再編に柔軟に対応し、5年後に1兆円規模のグループ会社になっても対応できるシステム」を目指し、人的作業やコストの削減、決算の早期化を目標としました。決算早期化のためには、グループ子会社の個別決算の早期化と財務諸表情報の連携効率化、そして親会社側での連結決算業務の効率化が不可欠でした。

「Biz∫」選定の理由

多数のパッケージを比較検討されたとのことですが、「Biz∫」をご評価いただいたポイントを教えてください。

梶山様

システムに業務を合わせる方針でしたので、パッケージ利用を前提に当社要件への適合性を重視しました。具体的には、会社数やデータ量への対応、自動仕訳機能、他システムとのインターフェースです。

「Biz∫」は、必要な機能が網羅されていた点、将来的なデータ処理増大に耐えうる点、グループ経営やシェアード用途の導入実績があり周辺システムとの連携性が高い点を評価しました。

選定当時は、「どの製品もあまり変わらないのではないか」と思っていましたが、実際の利用シーンにおいても操作しやすく、選択は間違ってなかったと実感しています。

株式会社NTTデータ九州(以下:NTTデータ九州)を選定した理由を教えてください。

梶山様

本社とグループ10数社を同時に短期間で導入するという難易度の高いプロジェクトでしたので、やはり信頼あるベンダーに任せたかったというのがあります。

NTTデータ九州は、経営トップから担当者まで万全な体制を整えており、当社の質問に対するレスポンスも早く、会社としての意気込みを感じました。「Biz∫」はじめとした開発実績豊富なNTTデータ九州の技術力、サポート力にも期待していました。

プロジェクト概要

本社とグループ12社一斉導入プロジェクトをどのように進めましたか。

西田様

ノンカスタマイズ導入を徹底するため、パッケージ機能に無い業務はやり方を変えたり、或いは思い切って削減したりして、アドオン開発を極力行わない方針を貫きました。「Biz∫」の業務テンプレートが用意されていたので、どのように業務を合わせていくかに注力できました。

導入作業は、日本と中国の開発拠点との共同で10名強のメンバーで進めました。前回のシステム導入時に比べると人員は約半分、また徹夜作業も発生することなく、約6カ月間という短期間で本社およびグループ12子会社への一斉導入ができました。その後に分社化された2社の追加導入も1週間程度で完了しました。

苦労した点は、当社の情報子会社と協力して同時に進めていた基幹系システム導入とBiz∫会計とのシステム連携作業調整でしたが、特に大きなトラブルもなく、プロジェクトを終了することができました。

新システムの稼働状況はいかがですか。

西田様

稼働して約1年が経過したところですが、現在まで順調に稼働しています。導入対象の会社は、小売業、物流業、金融業とさまざまですが、問題なく会計処理できています。

細かい運用設定の変更に際しても、NTTデータ九州から迅速に回答がもらえるので助かっています。

導入効果

導入効果をお聞かせください。

平方様

新システム導入後初の決算を無事終えることができました。

これまでは、必要な経営データの抽出に時間がかかっていましたが、新システムには全てのデータが格納され自社で取り出せるため、監査法人からの要求に迅速に対応できました。

連結決算についても、システム内でデータ連携が自動的に行われるため、データの整合性が図られ、これまでの人手を介した作業が削減でき、仕訳ミス防止にも役立っています。

西田様

システム保守を1人で対応できるようになったことも大きな効果です。これまでは専任体制で3名以上は必要でした。慣れていけば、兼務でも対応できるのではと考えています。グループ会社の増加に備えて、連結決算用の会社コードを入れるなど工夫しながら運用しています。

平方様

実際に利用して良さを実感した機能は次のとおりです。

まず、ワークフロー機能です。システム上で申請承認が完結するので紙が不要となりペーパーレスにつながりました。

次に、償却資産税の電子申告が可能となりました。これまでは、全国約200店舗の所在地の自治体毎に紙に記載して送付していたため、相当な負担だったのですが、新システム導入後は、約1/10と大幅に作業時間を削減できました。

また、仕訳の複写機能もよく利用しています。先月入力した仕訳を当月にコピーして使うなど便利で、利用者視点でつくられた製品だと感じます。

矢野様

総合的に満足度が非常に高いですね。

連結決算の集計手間が楽になり、経営データをタイムリーに把握することが可能です。決算早期化に向けて確かな手ごたえを感じています。

NTTデータ九州には、導入から稼働まで手厚くサポートいただきました。製品の完成度も高く、選んで本当に良かったです。

コスト面での効果については、これから具体的に数値化していきます。現場でのオペレーション削減効果は既に表れていますので、さらに使いこなして効率化を進めることが重要だと考えています。

今後の課題

トライアルグループ様の今後の取り組みについて教えてください。

矢野様

大きく3つあります。

1点目に、経営スピードの加速化、決算数字の早期確定です。そのためには売上規模が5倍10倍と増えたときに、支障なく迅速に対応できるシステムを整備することが重要です。キャッシュマネジメントシステムの導入ほか、近々に人事給与システム更改を計画しており、財務会計領域を中心に周辺業務のシステム化を図っていく予定です。

2点目に、「エブリデー・ロー・コスト」の追求です。お客様の満足度を高める(「LCC(Low Cost For Customer)」)ためには、ローコスト経営を追求し、本部機能の簡素化が課題です。当社のシェアードサービスはその一翼を担っています。

3点目に、AI技術の活用です。理想は、人手を全く介さずに決算処理が出来ることです。 当社の強みでもあるリテールテクノロジーやデータ分析を組み合わせて実現していきたいと考えており、グループ一丸となって取り組む所存です。

これからの当社のさらなる成長に向けて、NTTデータ九州にはパートナーとして引き続きご協力をお願いします。

グループ経営において、シェアードサービスに関心が高まっています。シェアードサービス成功のポイントをお聞かせください。

矢野様

最近、地元の企業から「シェアード化にどう取り組んだらよいか」とご相談を受けるようになり、バックオフィスを外部にアウトソーシングして本業に集中したいとお考えの経営トップが増えてきたと感じます。

一方で、シェアードサービスの失敗例も見聞しています。失敗の主な原因は、業務を標準化できないまま受託して高コスト化に陥る、また、シェアードサービス要員のモチベーション低下にあるように思います。

当社が目指しているのは、ITを活用することで人の介在を最小限にすることです。オペレーションはシステムに任せて、専門性の高い戦略業務に社員を配置したいと考えており、AI活用もその実現のための一手段です。

さらに、外部の企業が当社のシェアードサービスをご利用いただけるような仕組みができれば、1企業あたりの投資も少なくて済みますし、シェアードサービス人材の調達も不要となります。

グローバル企業も多く、経済発展の可能性を秘めた九州エリアにおいて、シェアードサービスは今後必要となってくると予想されます。特に、財務会計業務は標準化しやすいので、まずは当社のシェアード運用を定着させ、効率化しながらノウハウを蓄積していきたいと考えております。

お客様に良い品をより安くお届けするための、惜しみない努力が成長の源だと感じました。ありがとうございました。

株式会社トライアル・シェアードサービスの皆様

パートナーからの一言

このたびはNTTデータ九州をパートナーとして選んでくださり、誠にありがとうございました。新しい財務会計管理システムにご満足いただき、大変嬉しく思います。

業務システム導入においては、既定のやり方にこだわるケースも多く見受けられますが、トライアル様は、システムに業務を合わせるという方針を終始徹底していました。

プロジェクト要所でトライアル様の役員が陣頭指揮を取り、トップダウンで方針がぶれることなくスピーディに進められたことが、このような短期間での一斉導入成功の要因だと考えます。

私たちNTTデータグループが得意としているのは、システムの導入に留まらず、お客様の経営拡大に資する基盤やサービスをご一緒につくりあげていくことです。グループ経営やシェアード化は、業務の効率化、IT活用、経営高度化といった観点から企業の関心が高まっており、九州発の成功事例として普及のお手伝いができれば幸いです。

今後は運用面での課題やご要望を伺いながら、サービス向上やご提案に活かし、トライアルグループ様の飛躍的な成長を支えるために全社一丸となって努めてまいります。

株式会社NTTデータ九州

会社概要

会社名株式会社トライアルカンパニー
所在地福岡市東区多の津1-12-2 トライアルビル
代表者代表取締役 楢木野仁司
設立昭和56年7月
資本金21億2335万300円
事業内容小売/ソフトウェア開発/物流/商品開発・製造
※本事例に記載の情報は、2017年6月時点のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。