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消費税の軽減税率制度の概要と対応

【第1回】軽減税率制度の概要 (2017年04月執筆)

2019年10月に消費税率の引上げと合わせて軽減税率制度が実施されます。本コラムでは、この軽減税率の制度概要と企業が求められる対応について全3回にわたり説明します。

【各回の予定は次の通りです。】
  • 第1回(今回):軽減税率制度の概要
  • 第2回(予定):帳簿・請求書等の記載・保存の要件等
  • 第3回(予定):企業の影響と対応等

第1回は、導入の経緯を含めた制度の概要を説明します。なお、特に断りのない限り課税事業者を対象としております。

消費税率引上げの推移と軽減税率制度導入の経緯

我が国の消費税制度は1989年4月に税率3%で開始されたのち、1997年4月に税率が5%に引上げられてきました。
その後、2012年に成立した「社会保障と税の一体改革」関連法では、2014年4月から税率8%へ、2015年10月から10%への2段階で引上げることを決定していました。ただし、附則で景気弾力条項がつけられ、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講じる」こととされていました。結果として8%への引上げは予定通り行われましたが、10%への引上げについては2014年11月及び2016年6月の2回にわたり延期が表明され、2017年3月末現在では2019年10月に引上げ予定となっています。
 この2回目の引上げが検討される中で、与党内で軽減税率導入の要望が高まり、2015年12月決定の与党税制大綱において10%への税率引上げ時に軽減税率制度を併せて実施することが提示され、2016年3月の消費税法改正で決定しました。
 軽減税率制度の導入理由としては、「逆進性」の緩和とされています。すなわち、消費税では所得の多寡にかかわらず全ての人が同税率を負担するので、同額を支出した場合は低所得者ほど所得に占める税負担割合が大きくなります。これに対して、生活必需品については標準税率より税率を低くすることにより低所得者の税負担を緩和しようというものです。
 高額所得者でも軽減税率の恩恵を受けるため逆進性の緩和効果は限られるという指摘もあったものの、世論からの高い支持もあり実施が決定されました。

軽減税率制度の概要

①実施時期
2019年10月1日から実施されます。8%から10%への消費税率引上げと同時です。

②税率
軽減税率は8%です。2019年10月の実施では、標準税率を10%に引上げる際に一定の品目のみ8%を据え置くことを「軽減」としています。
 税率は正確には消費税率と地方消費税率に分かれ、図表1のようになります。軽減税率の対象で2019年10月以降も8%が適用される取引でも、現行と2019年10月以降では消費税率と地方税率の内訳が異なることには注意が必要です。


図表1:現行と2019年10月以降の消費税率(消費税率と地方税率別)


図1:現行と2019年10月以降の消費税率(消費税率と地方税率別)

③対象品目
(a)飲食料品
 食品表示法第2条第1項に規定する食品ですが、酒税法に規定する酒類は除きます。また外食を除きます。一方で、一定の条件を満たす「一体資産」を含みます。
 軽減税率の対象とする飲食料品の範囲については法案審議に至る過程で多くの検討がありました。生活必需品にかかる消費税負担の軽減、購入頻度の高さによる痛税感の緩和の観点を考慮しつつ対象品目を絞り込む方針で自由民主党・公明党与党税制協議会で検討され、また国会で審議された結果、酒類及び外食を除くこととなりました。
 国税庁公表資料から引用・要約した大まかなイメージと主な用語の意義は図表2、図表3となっています。


図表2 軽減税率の対象となる飲食料品の範囲(イメージ)
(出典:「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」(2017年1月改訂))


図表2 軽減税率の対象となる飲食料品の範囲(イメージ)

図表3 主な用語の意義
(「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」(2017年1月改訂)問2、問3及び問9の答を要約)

酒類 アルコール分一度以上の飲料(酒税法第2条第1項に規定する酒類)
医薬品、医薬部外品等 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品
外食 食品衛生法施行令に規定する飲食店営業及び喫茶店営業ならびにその他の飲食料品をその場で飲食させる事業を営む者が行う食事の提供
テイクアウト 飲食料品を持ち帰りのための容器に入れ又は包装をして行う譲渡(「持ち帰り販売」)
「店内飲食」と「持ち帰り販売」のいずれも行っている飲食店等において飲食料品を提供する場合に、どちらに該当するかは、事業者が飲食料品の譲渡等を行う時に判断することとなる
ケータリング 相手方の指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供
一体資産 食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもので、「一体資産」としての価格のみが提示されているものをいいます。
一体資産は、税抜金額1万円以下、かつ、食品の価額の占める割合が3分の2以上のもののみ軽減税率の対象となる

酒類、医薬品・医薬部外品等の区別は食品の表示を見れば明解ですが、外食、テイクアウト、ケータリング、一体資産の区別は販売される状況によるため区別が難しいといえます。
 軽減税率に関しては国税庁から「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達」、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)・(個別事例編)」が公表されており、軽減税率の対象か標準税率の対象の判定についてもこの中で多数の例示が提供されています。

<国税庁サイト>

  • 消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達): https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/160412/index.htm
  • 消費税の軽減税率制度について/Q&A(制度概要編)・(個別事例編): https://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/02.htm
  • (b)新聞
     一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞で、定期購読契約に基づくものとされています。

    ④帳簿及び請求書等(いわゆるインボイス)の要件
     軽減税率の導入により標準税率の取引と軽減税率の取引の区別が必要となるため、税率別に区分した請求書の発行・保存及び帳簿上の記帳が必要となります。
     請求書については課税事業者であれば2019年10月~2023年9月までは「区分記載請求書等」、2023年10月以降は「適格請求書等」の要件にしたがった請求書を販売側の事業者は発行し、また仕入・経費支出側の事業者は保存することになります。
     本コラムでは次回でさらなる説明を予定しています。

    影響する業務

    影響する業務について、第3回でさらに説明を予定しておりますので今回は簡単に説明します。

    ①すべての業種
    会議費・交際費・新聞代等の経費支払に影響があります。例えば飲食設備のある飲食店での飲食代は外食に該当し標準税率(10%)の対象となり、お土産の食品代(酒類を除く)は軽減税率(8%)の対象となり、出前をとった場合は軽減税率(8%)の対象となります。
     また、仕入税額控除の証憑として2019年10月~2023年9月までは「区分記載請求書等」、2023年10月以降は「適格請求書等」の要件を満たした請求書等を原則として保存することになります。
     さらに、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を区分した帳簿記帳を行うことになります。

    ②飲食料品・新聞の仕入販売を行う業種
    ①に加え、売上・債権管理業務、購買仕入・債務管理業務に影響があります。例えばレストランでは、飲食料品の仕入(酒類を除く)は軽減税率(8%)の対象となり、売上のうち顧客への飲食設備を利用した飲食の提供は標準税率(10%)の対象となり、レジ横の菓子の販売は軽減税率(8%)の対象となります。またファーストフード店ではより複雑で、標準税率(10%)の対象となる店内飲食か軽減税率(8%)の対象となるテイクアウトかの意思を店頭で顧客に確認することが必要となります。
     また、発行する請求書について2019年10月~2023年9月までは「区分記載請求書等」、2023年10月以降は「適格請求書等」の要件を満たして発行することになります。
     さらに、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を区分した帳簿記帳を行うことになります。


    <今回のまとめ>
    • ◆2019年10月の10%への消費税率引上げに伴って、軽減税率制度が実施される
    • ◆軽減税率は飲食料品、新聞が対象品目である
    • ◆飲食料品、新聞の仕入販売を行う企業以外でも経費支払には軽減税率対象の取引がありうる
    • ◆2019年10月~2023年9月は「区分記載請求書等」の、2013年10月以降は「適格請求書等」の対応が必要となる

    <注意事項>
    今回の内容は、2017年3月31日現在公表済の法律、通達等に基づいております。軽減税率は新たな制度であり、実施を控え今後も重要な内容を含む追加の通達等が公表されることが想定されますので、ご注意ください。


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    (第1回おわり)


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